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管理組合が放置車両撤去業者を利用すべきではない理由

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マンションの駐車場に自動車が放置されている場合に、管理組合内で放置車両撤去業者を利用すべきかどうかを検討されることがあると思います。

しかしながら、マンション管理組合においては放置車両撤去業者は利用すべきではありません。

まず、マンションの駐車場に放置されている自動車は廃棄車両とはみなしにくい場合が多いです。
ちゃんとした駐車場に駐車しているわけですから、放置車両の所有者が当該自動車の所有権を放棄しているとは断言できないからです。
そうすると、放置車両撤去業者に依頼をして放置車両をレッカーで撤去するというのは、所有者に無断でその自動車をレッカー移動して処分することになります。
自動車の処分はその所有者にしかできない行為ですので、自動車の所有者の所有権を侵害することになります。
民事上は、不法行為となり損害賠償責任が発生しますし、刑事上も器物損壊罪となり刑事罰を問われる可能性があります。
そして、その責任を負うのはレッカー業者ではなく、マンション管理組合やその理事個人になります。
おそらくレッカー業者との契約書にはレッカー業者が責任を負わない旨の記載があるはずです(レッカー業者は所有者がいることを知らない体になっていると思います。)。

例えば、マンションの住人が駐車場使用料を支払わず、自動車をそのまま1年近く放置している事案があったとします。その放置車両をレッカー業者に依頼をして撤去し処分するということを理事会で決定し、実際その通りに処分した後、突然その自動車の所有者が現れ、「自分は1年間海外に転勤していただけだ。駐車場使用料は払い忘れていたが、海外にいたため払えなかった。所有者に無断で勝手に自動車を処分するのは違法だ。その決定をした理事は自分に対して損害賠償を支払ってほしい。」との主張をしてきた場合に、その放置車両の所有者の主張は裁判上も認められてしまう可能性があります。
マンション管理組合のことを思って放置車両の撤去を行った理事が個人で責任を負わなければいけない事態は誰も望まない結果だと思います。

個人の私有地に車両が放置されている場合、その人は車両の放置によって受ける損害と仮に将来的に車両の持ち主から損害賠償を請求されて受ける損害を天秤にかけて、車両の放置によって受ける損害の方が大きいと思えば、たとえ違法であってもレッカー業者に依頼をして放置車両を撤去するという判断もあり得ると思います。仮にその後所有者が現れ、損害賠償を請求されたとしても最悪それを支払えばいいだけという考え方です。所有者が現れるのはレアだという価値判断もあるのだと思います。
しかしながら、マンションの駐車場の場合、所有者が後に現れる可能性もゼロではありませんし、何より理事個人が損害賠償をしなければならない危険性があるので、管理組合において放置車両撤去業者を利用するという判断は非常に危険だと思います。
たとえ多少お金がかかったとしても合法的な手段で解決するのがベターだと思います。かかってしまう費用は理事を守るための費用であると考えてください。

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